dlitの殴り書き

現在更新していません。もうひとつのブログ(https://dlit.hatenadiary.com/)を見てみてください

こういう具体的な指摘や批判の割合が増えてほしい

 ニセ科学に対する批判的な活動は基本的に応援しているのですが、私が「ニセ科学批判クラスタ」かって言われるともう最近は自称他称ともに微妙な感じがしますね。
schutzengel.hatenablog.com

思い返すと、以前もそれほど積極的に何か書いたりしてたわけではなかったなと自分のブログを読み返していて気付かされます。
 なんで自分で(より)書かなくなったかというと、一番は自分が仕事で忙しくなって議論や情報を追う時間やそもそも書く時間自体確保できなくなったというのが大きいのですが、ニセ科学に対する批判的な活動に関わる人もだいぶ(見える範囲に)増えて自分が何か書かなくてもそのうち誰かがいろんなことを書いてくれるんではと思うようになったということもあります。
 さて、そんな「ギャラリー」のようになっている私にとって、poohさんが言及しているyasugoro_2012さんの記事は、誰のどのような物言いが問題なのか指摘が具体的*1で大変助かります。
d.hatena.ne.jp
これは「ニセ科学批判」に限らないことなのですが、情報や文脈を共有できていない「ギャラリー」や第三者(?)にとって、ある話題ややりとりが気になっても(特に発言や指摘が曖昧で具体性に欠けると)途中から追い付くって大変なんですよね。場合によっては誰かがまとめを作ってくれることもありますけれども。
 この問題はずっと気になっていて、下記のような「お願い」を書いたこともあります。
dlit.hatenablog.com
そんなこと言いつつ、私も言語関係の話題では対象をぼかした揶揄やほのめかしをまったくしないわけではありませんし、意図的に具体性をぼかすのもレトリックの1つではあるかなと思います。あくまで「ギャラリー」からすると「助かる」ということですね。わかる人だけわかればいいやという状況もあるでしょう。
 批判や指摘を受ける側にとっては、具体的だとなんというか逃げ場がなくてたいへんとかつらいってこともあるでしょうけれど、ほのめかしにもやもやするよりはいいんじゃないかなあ。

おまけ

 ニセ科学問題に直接言及しなくなった主な理由は上に書きましたが、もう一つ個人的に重要なポイントとしては、私にはせっかく言語学・日本語学という専門があるので、専門のことを書く方にリソースを割いた方がいいだろうと考えているということがあります。それはそれでプレッシャーもあるのであまり思うようには書けてませんけどね。あくまで私の判断はそうということで、単純に一般化できる判断でもないでしょうけれど。

*1:細かく言えば「具体的である」ことと「具体例がある」ことは区別した方がいいのかもしれませんが、話がごちゃごちゃしそうなので以下特に区別していません。

オノマトペと「日本語の脳」に関する日本語特殊論

 テストやレポートに追い詰められた学生がついったーなどに呪いを吐き捨て(例:言語学滅びろ)、言霊がメカニズムとして存在していなくてほんとによかったなあと思う時期がまたやってまいりましたがみなさまいかがお過ごしでしょうか。

はじめに

 さて、雑感なのでタイトルも適当で内容はメモ書き程度です。そのうち丁寧な批判も書くかもしれませんが、ほんとはこういうのはもっとこう類型論とか複数の言語を研究対象にしてる専門家が書いてくれた方がいいと思うんですよね。どなたか。
 今回話題になってたのは下記の記事で、
news.infoseek.co.jp
あーまたこの話かと思って見てたらついったーでも意外と肯定的に出回ってるようです。
 以下言語に関することを少しだけ書きますが、今回の記事についているmachida77さんのコメントも参考にしてください。

かなり以前に否定された角田忠信の左右脳の話がいまだにこうして日本人特殊論のために使われるのか。八田武志『「左脳・右脳神話」の誤解を解く』で角田忠信の主張が否定された際の経緯が解説されている。
はてなブックマーク - 火薬と鋼の一言ブクマ - 2017年1月11日

追記(2017/01/12)

 machida77さんが神経科学に関する文献についてまとめてくださっています。
d.hatena.ne.jp

定期的に話題になっている

 私が直接言及したことがあるのは内田樹氏が取り上げたときで、

もちろんその時も批判がありました。
d.hatena.ne.jp
 ただこの話はけっこう人気があるようで(「日本(人)すごい」系の話と相性がよいからでしょうか)、定期的に見かけますね。今回のように長めの記事になるのはさすがにそれほど頻繁ではありませんが。

日本語のオノマトペ

 さて、この手の話によくくっついているのが、「日本語は擬態語・擬音語・擬声語が豊か」のような言説です。
 「擬態語・擬音語・擬声語」をまとめて呼ぶことができる「オノマトペ」という用語がありますので、以降「オノマトペ」で統一します。こういうのを知っておくと本や論文を検索する際に便利です。
 日本語の仕組みにおいてオノマトペが重要な位置を占めているし比較的多言語より豊かというのはざっくりとそう言ってもいいんじゃないかなあと思いますが、他の言語にはないわけではなくてけっこうありますよ、オノマトペ。ただ英語では動詞として出てきたり(するので日本語母語話者にはすぐにはわかりにくい)とか振る舞いが違うということはもちろんあります。
 ところで、韓国語にもオノマトペってけっこうあったと記憶しているのですが、どうでしたっけ。この辺りはきちんと調べないとわからないところなんですが韓国語研究にそこまで詳しくないのでやるとなるとちょっと時間かかりそうです。
 ちなみに韓国語はこれも時々日本語特殊論に登場する「敬語」に当たるようなシステムもありますし、英語なんかと比べて「日本語って独特だなあ」と思ったら他のヨーロッパの言語を調べるのもいいですが、韓国語を調べてみるのもいいんじゃないでしょうか。「日本語(だけ)がすごい」と言いたいだけというわけでなければ。
 確かに言語には色々な差がありますが、一件Aという要素がないように見えても、言語によって現れ方が違うとか他の要素がその「機能」を肩代わりしているとかってパターンもあるので、言語的特徴から何かの結論を導くタイプの議論には注意が必要です(というか安易にはやらないのが一番だと思います)。

読書案内

 専門書1冊だけになっちゃいますが、既読のものでおすすめは以下の本でしょうか。

オノマトペ研究の射程ー近づく音と意味

オノマトペ研究の射程ー近づく音と意味

これもよく俗説言語論に登場する音象徴に関する専門的な知見が得られるので、言語学になじみのない方が参照するのはハードル高いと思いますが、紹介しておきます。

関連エントリ

d.hatena.ne.jp

問題点を指摘するときは具体例を添えてもらえると嬉しい

 なんかだいぶ前にも似たようなことを書いた気がする。
anond.hatelabo.jp
anond.hatelabo.jp
 定期的に見かける意見じゃないだろうか。こういう時に、どのようなことが「ハイエナのように、叩く」「嘲笑」なのか、具体例を挙げてもらえるともやもやする人が減るんではと思うことが多い。
 こういう意見に対して、自身でがっつり「批判」もしている人から反論があったりするけど、問題点を指摘したい対象はそのような人たちではないのではないかな(勝手に想像して申し訳ない)。
 ここに一つでも具体例の例示があると、「その言い方は確かに問題だ」とか、「いや、これは「批判」ではないけどアリだと思う」とか、話が具体的になるきっかけになると思う(ならないかもしれない)。はてブのコメントじゃなくて増田なら文字数もそんなに気にしなくていいわけだし、直接ブコメのリンクをはらなくても、「たとえば「○○」って言い方」のような例示でもだいぶわかりやすくなるような。そうすると、たとえば「「笑い飛ばす」のはアリだけど、この表現はアウト」みたいなもっと突っ込んだ話も読めるかもしれない。
 もちろん具体例の例示はいいことばかりじゃなくて、その具体例に話が集中してしまうとか、例示されなかったものへの許容を読み取ってしまう人が出るとか、デメリットもあるけど、例示しないことによるデメリットの方が問題なんじゃないかなというのが僕の見積もり。
 タイトルでも「嬉しい」と書いたように、これが「よい」ものかどうかはまだ自身を持って言うことはできていない。どうでしょうか。ちなみに、ニセ科学の話に限らず、色んな話題で感じることです。