dlitの殴り書き

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三点リーダーの話とことばの規範性

 三点リーダーを2つ繋げて使うというのはたしか文字・表記の授業の調べ物をしていてたまたま知ったんだと思う。togetter.com
 こういう話題を見ていると、ことばに対して規範を求める・設定する気持ちっていうのはホントに強いんだなあと感じる。
 言語学日本語学の授業では必ず規範の話をすることにしている。その中の1つに、ことばの規範や「正しさ」というのは自動的にことばの方で決まっていることはなくて、(どこかで)誰かが決めているという話があるのだが、その「誰か」には国やメディアや専門家の他に「みんな」も入る。これは受講生に聞いてみると割と出てくる答えなので、身近な・周囲の人にことばの規範を求められているという実感はいろんな人が持っているのだろう。
 この話をする時に、ときどき2chの例を出す。それは私自身の経験で、日々新しい表現やジャーゴンが生み出されているような2chでも、(ジャーゴンや意図的な誤表記に対してでさえ)必ず「そのことばの使い方は間違っている。もともとは…」と指摘する人が現れるというものだ。これは2chを見始めた当時はかなり印象的な体験で、こういうアングラ・無法地帯感を演出するような場(板によるけど)でもことばに対する規範を求める人ってのは出てくるんだなあと(もしかしたらだからこそかもしれないけど)。あと語や表現の由来・語誌の混乱も短期間で簡単に起こるんだなと。まあこれはわざと混乱させる人がいるからなんだけど。ちなみに見ている方としては語誌が分かって面白かったりする。
 さて、こういう記号・符号の研究というのは言語学日本語学ではあまり多くないけど、

  • 森山卓郎 (2013)「句読点、補助記号とその表現効果」『日本語学』32(5)(臨時増刊号 特集ことばの名脇役たち): 132-143.

に、文末記号と音声の関わりに関する面白い考察がある。ちなみに三点リーダーについては「発話者の言い切れない思いがまだもやもやと存在する用法がある」「記号の前の発音がゆっくりの場合三点リーダーを選択しやすい」といった性質が指摘されている。

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