dlitの殴り書き

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オノマトペと「日本語の脳」に関する日本語特殊論

 テストやレポートに追い詰められた学生がついったーなどに呪いを吐き捨て(例:言語学滅びろ)、言霊がメカニズムとして存在していなくてほんとによかったなあと思う時期がまたやってまいりましたがみなさまいかがお過ごしでしょうか。

はじめに

 さて、雑感なのでタイトルも適当で内容はメモ書き程度です。そのうち丁寧な批判も書くかもしれませんが、ほんとはこういうのはもっとこう類型論とか複数の言語を研究対象にしてる専門家が書いてくれた方がいいと思うんですよね。どなたか。
 今回話題になってたのは下記の記事で、
news.infoseek.co.jp
あーまたこの話かと思って見てたらついったーでも意外と肯定的に出回ってるようです。
 以下言語に関することを少しだけ書きますが、今回の記事についているmachida77さんのコメントも参考にしてください。

かなり以前に否定された角田忠信の左右脳の話がいまだにこうして日本人特殊論のために使われるのか。八田武志『「左脳・右脳神話」の誤解を解く』で角田忠信の主張が否定された際の経緯が解説されている。
はてなブックマーク - 火薬と鋼の一言ブクマ - 2017年1月11日

追記(2017/01/12)

 machida77さんが神経科学に関する文献についてまとめてくださっています。
d.hatena.ne.jp

定期的に話題になっている

 私が直接言及したことがあるのは内田樹氏が取り上げたときで、

もちろんその時も批判がありました。
d.hatena.ne.jp
 ただこの話はけっこう人気があるようで(「日本(人)すごい」系の話と相性がよいからでしょうか)、定期的に見かけますね。今回のように長めの記事になるのはさすがにそれほど頻繁ではありませんが。

日本語のオノマトペ

 さて、この手の話によくくっついているのが、「日本語は擬態語・擬音語・擬声語が豊か」のような言説です。
 「擬態語・擬音語・擬声語」をまとめて呼ぶことができる「オノマトペ」という用語がありますので、以降「オノマトペ」で統一します。こういうのを知っておくと本や論文を検索する際に便利です。
 日本語の仕組みにおいてオノマトペが重要な位置を占めているし比較的多言語より豊かというのはざっくりとそう言ってもいいんじゃないかなあと思いますが、他の言語にはないわけではなくてけっこうありますよ、オノマトペ。ただ英語では動詞として出てきたり(するので日本語母語話者にはすぐにはわかりにくい)とか振る舞いが違うということはもちろんあります。
 ところで、韓国語にもオノマトペってけっこうあったと記憶しているのですが、どうでしたっけ。この辺りはきちんと調べないとわからないところなんですが韓国語研究にそこまで詳しくないのでやるとなるとちょっと時間かかりそうです。
 ちなみに韓国語はこれも時々日本語特殊論に登場する「敬語」に当たるようなシステムもありますし、英語なんかと比べて「日本語って独特だなあ」と思ったら他のヨーロッパの言語を調べるのもいいですが、韓国語を調べてみるのもいいんじゃないでしょうか。「日本語(だけ)がすごい」と言いたいだけというわけでなければ。
 確かに言語には色々な差がありますが、一件Aという要素がないように見えても、言語によって現れ方が違うとか他の要素がその「機能」を肩代わりしているとかってパターンもあるので、言語的特徴から何かの結論を導くタイプの議論には注意が必要です(というか安易にはやらないのが一番だと思います)。

読書案内

 専門書1冊だけになっちゃいますが、既読のものでおすすめは以下の本でしょうか。

オノマトペ研究の射程ー近づく音と意味

オノマトペ研究の射程ー近づく音と意味

これもよく俗説言語論に登場する音象徴に関する専門的な知見が得られるので、言語学になじみのない方が参照するのはハードル高いと思いますが、紹介しておきます。

関連エントリ

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