dlitの殴り書き

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形態理論研究会第1回(Syncretism & Suppletion)雑な雑感

 終わりました。来場・配信の視聴ともに参加して下さった皆さんありがとうございました。
 ちょっと思ったことなど。こういうインフォーマルな会の感想は詳しくは書きにくいので断片的に。前はこういうのは

に書いていたのだけれど、最近どこかにまとめた方がいいかなと思ってお試しの意味もあり。

WP(Word & Paradigmモデル)とDM(Distributed Morphology)の対比

 理論的形態論の話はかなり抽象的になるところもあるので難しいかなと思っていたけれど、二つの対立した立場から同じテーマについて話すというのが良い助けになったのではないかと思う。少なくとも自分では再整理できたところが色々あって良かった。乙黒さんが丁寧にイントロをやってくれたおかげで僕はほぼDMについてだけ話せば良かったということもある。
 理論の話はどうしてもモデルや概念の導入に時間を割かなくてはいけないので研究発表ではいつも苦戦するのだけれど、今回は時間をたっぷり取ることができたのも良かったかな。
 対立点については、Stumpの言うlexical vs. inferentialの他に、lexialist vs. anti-lexicalistであったり、モデルを現象のcoverageを広くできるような設計にしているか、より制限的なモデルとして設計しているかであったりという複数のポイントがあって、面白いんだけれど今回の内容だけではそれはなかなか説明しきれなかったかなと思う。複数のトピックを通じてその辺りについても示すことができればよいのだけれど。

DMのモデルをどう洗練させるか

 さて、質疑で出たDMはもっとモデルをシンプルな形に洗練させることができるのではないかという話。
 質疑でも答えたように、モデル自体はさらに洗練させる必要があると思うけれど、syntaxと同様にシンプルにする方向に向かうのが良いかと言われるとちょっと躊躇するかなという感じ。

で紹介した書評のイントロにも少し書いたのだけれど、形態論てmessyな現象を多く取り扱うし、messyであることそのものが一つの問題設定になるようなところがあるので、一見するとad hocなものを仮定しなければならないことは仕方ないかなと。その上で、もしできればそういう個別の規則の適用条件なんかに何らかの一般性が見出せると良いんじゃないかな(たとえばMergerに一種のlocality conditionが仮定されるように)。
 あまり無理に形態論のモデルをスリム化すると、結局せっかく形態部門(PFサイド)にまとめてきたものを統語部門に差し戻すか、音韻論辺りに負担してもらうかになっちゃう気も。それで良い結果になるなら試してみてもいいかもだけれど。
 もちろんモデルが何らかの形で昇華できるのであれば良いことだと思うけれど、その前に生成統語論初期にあったとにかく色んな現象の句構造規則と変形規則を書き出して整理するってプロセスが必要かな。ただ一からやらなきゃいけないわけじゃなくてすでにDM以外の枠組みで行われた形式化が色々あるし、日本語でもたとえばMcCawleyの研究とか、参考にできる形式化が色々あると思う。
 研究会でも少し話したけれど、DMを使って研究をやっている人には形態論寄りの人と統語論寄りの人がいる(個人をどっちかに分けられるわけでもないけど)こともあってか、この手の話はしばしば聞かれるように思う。DMは形態理論としてはまだまだ手が付けられていない現象・問題が色々ある気がするので、この研究会ではそっちに焦点が当てられると良いかな。