はじめに
下記の記事は子宮頸がんの原因となるHPVワクチンに対する適切な理解と適切な報道を訴えている解説記事である。記事の最後に付記という形であるが利益相反についても記述があり,好感を持った。
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内容についてここで何か言及したいというわけではなく,タイトルが気になったので少しメモしておく。
かかり先の違い
「根拠なきワクチン批判で救える命を見殺しにしないで」というタイトルは「根拠なきワクチン批判で」が「救う」にかかる(修飾する)か「見殺しにする」にかかる(修飾する)かの解釈の違いで正反対と言って良いほど意味が変わってしまうのではないか。
- 「根拠なきワクチン批判で」が
- 解釈1「救う」にかかる:「根拠なきワクチン批判」で(も)救える命があるのに無視しないでほしい
- 解釈2「見殺しにする」にかかる:救える命があるのに「根拠なきワクチン批判」によって見殺しにしてしまうことはやめてほしい
記事を読めばすぐ分かるが,意図している解釈は2である。
じゃあどう書くか
では両者の解釈が平等になされるかというと,前提となる知識の影響の方が大きそうな気もするが,「根拠なき」というネガティブな評価の修飾表現が解釈2への誘導として働くのではないかと思う。
タイトルの意図を分かりやすくするには,たとえば読点を打って「根拠なきワクチン批判で,救える命を見殺しにしないで」とするというのも考えられるが(音声言語ではここにポーズを入れることがやはり解釈の助けになる),やはり語順を変えて「救える命を根拠なきワクチン批判で見殺しにしないで」とするのが確実だろうか。
ちなみに仮に解釈1を(元のタイトルをあまり変えずに)はっきりさせたい場合は「「根拠なきワクチン批判」で救える命を見殺しにしないで」とすると,「根拠なき」のネガティブ評価が引用扱いになってちょっと良くなるかな。
どの場合も別のタイトルに書き換える方がもっと楽かつ確実かもしれませんけどね。
おわりに
同シリーズの他の記事はカテゴリー「title」からどうぞ。今回は記事のタイトルを取り上げるタイトルそのものを引用する形にしてみました。